相続税の事前対策 名義預金について
名義預金とは、被相続人の配偶者、子、孫などの家族名義になっているが、実質的は被相続人の預金であり、相続税の申告に当たっては相続財産に含める必要のある預金をいいます。 近年では預金口座の開設にあたり、本人確認が厳しくなされるため、本人以外の名義で預金口座を開設することは基本的にできませんが、過去においては、家族名義で預金口座を開設することが比較的容易にできることがありました。このような場合に、預金の名義者がその預金の存在を知らず、管理運用も行っていないならば、その預金は被相続人の預金と判断されることになります。また、預金の存在は把握していても、預金の名義者に特段の収入がない場合には、贈与を受けた事実の存否、贈与税の申告の有無なども問題となってきます。
名義預金についての裁判事例(東京地裁平成20年10月17日)によると、「ある財産が被相続人以外の者の名義となっていたとしても、当該財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かは、当該財産又はその購入原資の出捐者、当該財産の管理及び運用の状況、当該財産から生ずる利益の帰属者、被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係、当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯等を総合考慮して判断するのが相当である。」と判示されています。
相続税の事前対策を行うにあたっては、このような名義預金の有無を調査し、名義預金が存在する場合には、どのような経緯で名義預金となったのかを把握した上で、必要な場合には贈与税の申告を行う等、適切に処理する必要があります。名義預金を意図的に相続財産から除外して申告しなかった場合には、重加算税が課されて、配偶者に対する相続税額の軽減の規定が適用されないことがありますので十分な留意が必要です。